マーク式解答と記述式解答

この時期、悩ましいのは、私立大学と国公立大学を併願する生徒の答案作成指導です。

国公立大学では、昔ながらの記述式の問題形式です。ところが、学部ごとにしかも数回に分けて受験日を設けている私学の場合、採点に手間のかかる記述式の問題よりマーク形式の出題が多いのです。

マーク式の場合、センター試験と同じように、とにかく答え(数値)さえ合っていれば、正解とされます。(←たとえ、まぐれであっても)途中の論理展開はまったく問われません。したがって、よく出るパターンの問題には、邪道ですがそれ用のはやわざ公式(?)を教えたりもします。

しかし、記述式の答案で求められているのは、数値としての答ではありません。

高校の数学教師と国立大学の数学出題者との懇談会で、いつも各大学からの要望として「数学より、まず国語の力をつけさせてほしい。数式の羅列で、なぜそうなるのかの説明のない答案がとても多い」と指摘されます。

京都大学の丸山正樹教授は
「採点の現場から見て、良い答案とはなんであろうか。数学に限らず記述式問題では、問われているのは、まず国語力が問われているということを肝に銘じなければならない。思考の過程と論証を明快に表現できなければ、よい評価が得られないのは当然である。」
「数学だからといって、計算結果が正しければよいだろうと、書きなぐったような答案に対する評価は極端に低い。私たちが評価したいのは思考過程であり、結果のみではない」
と言われています。

わたしも、丸山教授のおっしゃることに全面的に賛成で、生徒さんに「採点者にあなたの論理展開が良く伝わるよう、言葉を多く挟んで答案を書きましょう」とよく申します。

ですが、マーク形式で求められているのは、残念ながらそうではありません。

同じ数学の解答作成でありながら背反する態度を求めるのが、ほんとうに申し訳ない気持ちになるのが、毎年のこの時期であります。