因数分解のお話しになったついでに、もう一回だけおつき合いを(^_^;)
大学入試問題で、「次の式を因数分解しなさい」と、直接問われることは多くありません。中堅校以下の大学ではたまに出題されますが、世間で言う難関校ではまず出題されません。
進学校の高3生や予備校の授業でも「式の展開」「因数分解」にそれほど力は入れないですね。
しかし、因数分解の力をなめてはいけないという好例が、2005年の京都大学の入試問題(後期)です。
珍しいことに、この問題は
『の最大値と最小値を求めよ』
という問題だったのを、他の問題との兼ね合いもあり、もう少し難しい問題にしましょう、と差し替えられたものです。
上記の問題だってそれほど易しいとはいえませんが、差し替えられた次の問題は京大受験生でさえちょっと難しいでしょう。
−−−問−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
角α,β,γが、α+β+γ=180°、α≧0°β≧0°γ≧0°を満たすとき、
cosα+cosβ+cosγ≧1を示せ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
普通は「和積公式」で変形して解きますね。texが不慣れでお見苦しいですが…m(_ _)m
−−−解1−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここで
0°≦≦90°、0°≦≦90゜、 0°≦≦90゜なので、
≧0
≧0
≧0
したがって
≧0
ゆえに
cosα+cosβ+cosγ≧1【証明終】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
と、式だけ見るとそれほど難しくないようですが、実際は難しいと思います。
そこで、三角形の形状決定問題で活躍する《角度の関係を長さの関係に!》が使えないか?と思い、「余弦定理」を使ったこんな別解が思いつきます。
−−−解2−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
まず
(1)α>0、β>0、γ>0のとき
角αの対辺をa、角βの対辺をb、角γの対辺をcとする三角形を考えると
余弦定理より
cosα+cosβ+cosγ-1
この式の分子だけを考えます。(分母の2abcは正ですから、分子が正になればいいのです)
分子
[tex:=a*1]
a、b、cは三角形の辺の長さですから、
a+b-c>0、b+c-a>0、c+a-b>0が成り立ちます。
したがって、分子>0
分母2abcも正ゆえ
cosα+cosβ+cosγ-1>0
次に、
(2)α、β、γのどれかが0゜のとき
たとえばγ=0゜として
cosα+cosβ+cos0-1
=cos(180-β)+cosβ+1-1
=-cosβ+cosβ
=0
他の場合も同様であるから成り立つ。
ゆえに、(1)(2)より
cosα+cosβ+cosγ≧1【証明終】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
これは、≪角の関係を辺の長さの関係に≫の方針で、あとはひたすら因数分解を行うだけの問題になります。(分子の因数分解は途中を少し省略しています。)
やや複雑な因数分解ですが、sinやcosがないだけやりやすいのでは?と思います。
キノシタは『侮るなかれ!因数分解の威力』と言いたかったわけです(^_^)/