中学生向けの「新しい数学の教科書」(文一総合出版:数量編と図形編の計2冊)は、従来の学習参考書とは、一線を画す内容の本だと思います。(その発刊の趣旨は、「はじめに」と「あとがき」に述べられていますのでお読み下さい。)
この本は、例題とその解説・解答を提示し類似の問題を並べて解法をマスターさせるようなスタイルではありません。もっと基本的なことに力を入れています。たとえば「なぜ、かけ算・割り算を足し算・引き算より先に計算するのか」「なぜ、角の単位が度とよばれるのか」というようなことが、具体的に説明されています。
また、随所に人類の数学との関わり・数学の歴史が「コラム」として取り上げられており、生徒の興味を引くことでしょう。
今の教科書に疑問を投げかけている個所もあります。たとえば、昔の教科書では、2次方程式の「根の公式」、判別式D=0なら「重根」というように「根」と言う用語で書かれていました。1969年の学習指導要領以降は「解の公式」「重解」というように「解」と統一されています。ところがこの「新しい数学の教科書」によると、「解」と「根」とはちがうもので「重解という言葉はありません」(P212の「発展」参照)と書かれています。
中学生はもちろん、数学教師こそが読むべき本だと思います。