<まず問題を解け!>の、そのまえに

数学の勉強法を指南した本がたくさんあります。その中で、鍵本聡さんの「高校数学とっておき勉強法」(ブルーバックス)は、<まず問題を解け!>と述べています。

 ........................... 引用 ....................................

読者のみなさんが新 しいファミコンのゲームソフトを手に入れたとしよう。最初にルールを熟知し攻略法を読んでからゲームにとりかかるだろうか。たぶんほとんどの読者はまず実際にゲームをしてみてから、 問題が出てきたところで攻略本を読むだろう。攻略本を読むまでもなくすいすいといく時は、 攻略本を読む必要はないのだ。それと同じことが数学についても言える。

効率的に数学を勉強している学生とそうでない学生の根本的な違いは、「数学の単元を理解すること」と「数学の問題を解くこと」に対する考え方だ。攻略本を読むこと=理解すること、ゲームをすること=問題を解くこと、というふうに考えてみよう。高校や大学受験の数学をマスターするためには、「数学の問題を解くこと」がより大切なのだ。

新学期になって「よし、今年こそ数学の勉強をしよう」と意気込むのはいいが、意気込んで授業を聞いて「ふんふん」といくら理解したところで、実際の1学期の中間試験や期末試験、模擬試験などで出題される問題が解けなければ0点だ。

逆に、授業がまったく理解できなくても、例えば授業中に行われる定理の証明が全然理解できなくても、あるいは授業で説明される問題がそのとき解けなくても、試験の時に出題された問題が全部解ければ100点満点なのだ。

つまり、高校における数学の試験というのは、「問題を解くこと」から始まると言っても過言ではないのである。ある意味で当然のことなのだが、このことを勘違いしている学生はかなり多い。すなわち、問題を完全に解くために、その単元を完全に理解する必要はないのだ。

正直なところ、筆者を含めて多くの数学教師に共通して言えることだが、すべての公式をすらすらとそらんじることのできる教師は皆無に近い。もちろん、少し時間があれば自力で導くことはできるのだが。

結局、数学の達人になるということは、公式を覚えることではなく、公式の使い方を覚えることだ。そして、公式を忘れても自分で作りだせるようにすることだ。公式を覚えても、使えなければただの呪文である。

そこで、新学期になって「今年こそ数学の勉強をしよう」と意気込んでいる生徒には、まず問題を解きなさいと提案したい。「何もわからないのに、どうやって問題を解くのか」と聞かれるかもしれないが、それがもっとも効率的な数学の学習法なのだ。

数学の問題を解く実力は、授業を理解することとはほとんど関係がないのだ。授業を理解せずに、いきなり問題集をやってできるものなのだろうか? 最初はなかなか難しいかもしれない。しかし、だんだん慣れてくる。慣れてくるころには、かなり数学の実力がついてきているはずだ。 だから、 まずは問題を解こう。

数学のもっとも効率的な学習法は、ひたすら「問題を解く」ことである。数学の公式や定理などは、問題を解くための「ただの道具」にすぎないのだ。
......................................................................

ベテラン鍵本先生は「公式を忘れても自分で作りだせるようにすることだ。」と、さすがに良いことを言っています。

ただしキノシタ、<数学のもっとも効率的な学習法は、ひたすら「問題を解く」ことである。数学の公式や定理などは、問題を解くための「ただの道具」にすぎないのだ。>という勉強法については、全面的に賛成というわけではないんです。

たしかにこの方法で効率よく勉強できる生徒もいるでしょう。ただし、ある程度理解力が優れている生徒の場合ですね。

数学がとっても苦手な生徒にとっては、公式や定理そのものが「なんのことやら~???」と、まるで暗号のように思えるのです。

ですから、キノシタは、公式や定理をどうしてそうなるのかを生徒の分かるレベルまで降りていって、腑に落ちるように説明します。「あぁ、そういうことなのか!」と分からなければ、ただ単に、問題を公式に当てはめて答を出せたとしても、次につながらないです。

たとえば、2点A,B の内分点p・外分点qを求めるベクトルの問題を、公式

f:id:eisuumanabu:20200929131840j:plain

に当てはめて、正答できました。よかった、よかった。で、次に進んでいくのは効率的です。

しかし、この公式がどうしてそうなるのかを図で示しながら解説して生徒に理解させておくことが、その先にあるたとえば「直線のベクトル方程式」を考えるのにつながっていくのだと思います。

数学が不得意な生徒に私のおすすめ勉強法は、教科書をはじめから丁寧に徹底的にやる、という単純素朴な方法です。お勧め参考書は教科書ガイドです。