「鉄緑会」講師が語る、数学勉強のコツ

鉄緑会の蓑田恭秀氏が「東洋経済オンライン」に、数学勉強法について書かれています。東大に限らず難関校大学入試数学には、とても参考になる記事です。

「数学で良い成績を上げるには、ようするに解法パターンの暗記だ!」論についても、わたしの思うところと同じことを述べておられます。ある局面では正しいし、ある局面では弊害を生む、ということです。

その他、重要と思われる個所を引用しておきます。

(全文は https://toyokeizai.net/articles/-/382120 でご覧ください)

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■東大に受かる生徒・落ちる生徒
 世間で「数学は暗記か」という命題が取り沙汰されることがありますが、答えはイエスでもあり、ノーでもあります。というのは、この質問への答えは学習フェーズにもよるし、解く問題にもよるからです。

 入試数学の基礎を学んでいくフェーズでは暗記の割合が大きいでしょう。たくさんの公式が出てきて、それを適用する練習をさらにたくさんしなければなりません。そこにオリジナリティーを発揮する余地はありません。

 これはスポーツでも同じです。野球でもテニスでも柔道でも水泳でも体操でもゴルフでも、まずは基本の「型」を徹底的に身に付けることから始まります。それには長い時間がかかります。

 数学の勉強でも同じです。数学の論理展開にも、答案の書き方にも、一定の「型」があり、それを逸脱した答案というものは、オリジナリティーなどというものではなく、単に相手にされないだけです。「自己流」はダメです。

もちろん、無機的に暗記するというより、「基本動作を何度も何度も繰り返し、自分の身体に覚えさせる」という意味合いのほうが強いです。

 ただ、それだけで東大入試を突破できるかと言えば、さすがにそんなことはありません。

 「型」だけで対応できる問題ももちろん出題されはしますが、一定以上のレベルの入試問題について言えば、そのような問題では受験生の間で差はつかず、そうでない問題で差がつくわけです。「型」を身に付けるのは、差がつくレベルの問題に挑戦するための必要条件にすぎず、それだけでいいなんてことは絶対にありません。

■定石 vs 思考力
 たまに、「数学はパターンを暗記すれば大丈夫だ」と言う人がいます。その意図もわからなくもないのですが、それと同時に、そう言い切るための根拠も薄いと思います。何を「パターン」と呼ぶか、何を「暗記」と呼ぶか、その場で必要なアイデアがどれくらい浮かぶか、などの人による部分、そして目標とする大学の入試問題のレベルによる部分の両方ともが大きすぎるからです。

 入試における数学では、新しい問題にぶつかったときに「それまでの経験・知識をどのように応用するか」という部分が大切になってきます。したがって、中高6年間の学習の中のどこかのタイミングで、「型を身に付けるフェーズ」から「型を応用するフェーズ」に学習姿勢を切り替える必要があるのです。

新しい問題にぶつかったときに適切な解法が浮かぶかどうかは、どれだけの解法を覚えてきたかではなく、どれだけ自分の頭で考えてきたか、そしてどれだけ数学的な頭の動かし方ができるようになっているかによります。

「数学的な頭の動かし方」をせず、解けなかった問題について解答を読んで理解し覚えようとする勉強。これが最もやってはいけない勉強です。覚えようとすることは、理解することを放棄することにほかなりません。

 覚えればどうにかなるだろう、という考えの人は、新しい問題に対して試行錯誤をしたがりません。そんなことをしている暇があったら、模範解答を読んで理解して覚えたほうがいいと思ってしまう。そして覚えようとして、思考停止に陥る。そうしている間にも新しい問題はどんどん出てくる。ひとたびこの「覚える病」にかかってしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しいです。

 自分の頭で考える時間を長く取ってこなかった人は、その分模範解答とにらめっこする時間が長かったのだと思いますが、模範解答は基本的に、このような実験や試行錯誤を経たうえで答案用に体裁を整えた“よそ行き”のものです。

 模範解答の作成者も、そこに書いてあるとおりに考えたのではありません。そのことを知らずに模範解答を一生懸命理解しようとするだけでは、数学はできるようにはなりません。その裏にある、(時にもっと泥臭い)解法のアイデアにたどり着くまでの考え方を探る努力をしなければなりません。

■人に教えることをイメージする
 そう言われても実際にどうすればいいのかわからない、という人もいるでしょう。そのときに最も大事なことが、

「人に教えることをイメージして勉強する」

 ことです。問題を解き終わり、理解したと思っても、そこで終わらず、その問題を一から人に説明できるかを試してみてください。その際の相手としては、自分よりも少し下のレベルの人をイメージしてください。自分よりも数学が少し苦手な“架空の後輩”などを頭の中に住まわせておいて、その後輩に向かって説明するイメージです。
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蓑田氏が力説するように、自分の頭で考えることはとても重要です! しかし、それほど入試が難しくない大学を受験する場合、「基本の「型」を徹底的に身に付けること」だけで合格点に達するように思います。

まずは、教科書の問・例題や、たとえば白チャートの「基本例題」を体に染みこむまで、繰り返してください。