三浦展「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」(光文社新書)

むかし学校に通勤していたときも、家庭教師で生徒さん宅で勉強を教えている今も、たいてい同じようなスタイルです。

ジャケットかブレザー、チノパン、ワイシャツはボタンダウン。なんとか先生っぽい感じに仕上がります。ブランドはJ-PRESS。

家では、もっぱらユニクロ無印良品。同じ物をまとめ買いして着回しています。

「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」? 私の場合は、いちいち考えるのが面倒なので、たまたまそうなっただけ。おしゃれとは言いがたいです。

さて、三浦さんのこの本。今の世の中を分析・評論してきた多くの著書のキーワード集のようなものになっています。

 

 

........................... 目次より ....................................

【1】消費行動の変化
「楽しい」から「うれしい」へ/第四の消費/シェア/シンプル族/毎日同じ服を着るのがおしやれな時代/クレジツトカードを退会する/ベターライフからマイベストライフヘ~ウェッジウッドが日本中で捨てられる?/自己拡張感から自己肯定感ヘ/自己関与性/ワンランクアツプからワンランクダウンヘ/大衆文化のストック化/拾う時代~セレブリテイからセレンディピティヘ/リシンク RETHINK/おさがりからおあがリヘ/若い男性の主婦化と老若男女同一市場/中年男性のおうち化/

【2】 世代の新しい意識。
表参道にいらつく/かまやつ女/きれいなおじさん/暗黒女/黒いママチャリ/ポロからボロヘ/チャイルド・ウーマン/派・族・系/隠れバブル/中年男性二人連れ/一人焼き肉と便所飯/文化系おじさん/

【3】 少子高齢社会の男女と家族
ライフスタイルケア/若者はレアメタル/3人の高齢者が1人の若者を支える/制約社員/コトコト交換と時間貯蓄/ゆるやかな大家族/2.5世帯同居/逆老老介護・老老内介護・友達介護/有料会話/老若男女共学/ソーシャル子育て/夜の子育て支援と新・父子家庭/熟年結婚/親と一緒に風呂に入る中学生/親ロス/墓友、墓ペット、墓シェア/

【4】 都市や街はどう変わっていくべきか ⋮
シェアタウン/街をシェアする/古いものが残っている街/銭湯を新築する時代/老人テーマパーク・阿佐ヶ谷/広場と新しい公共/チョツピングモール/SNSは都市を分散型にする/寝るだけベッドタウンから寝たきリベッドタウンヘ/CCRC/衰退する郊外住宅地の隠れ難民/郊外再生/スタバよリスナバ/地方好きな若者/新・四畳半暮らし/新・ご近所づきあい/商店街をシェア店街に/コムビニ/コモビリティ/
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なるほど!と膝を打つような新語もあれば、なんじゃ?と思うような造語もあります。

 

いわゆるトレンドを知るのに、ときどき三浦さんの本を買います。世の中への目の付け所、軽妙な語り口、データのうまい切り取り方。どの本も、退屈しません。

めったに悪意のあるようなことは書かないのに、ブランドの大きな刺繍のあるポロシャツおじさんには、容赦ない悪口。笑いました。

ぼくも、このブランドの売り場で、この手のポロシャツを見て「一体誰が、こんなの買うのかしら?」と思うからです。
しかも、たま~に、このポロシャツを着ている男性と街で出くわすこともあって「うわぁ、ほんとに着てる!」とびっくりしてしまうのです。


......................... 引用 ........................................
【ポロからボロヘ】
 1980年代の若者というと、ブランド好きで、多くの人がラルフローレンのポロシツを着ていたものです。その他にもいろいろなロゴ刺繍付きのポロシャツやテニスウエアが人気でした。

 そこへ行くと今の若者はブランドが刺繍された服を着ませんね。ナイキやアディダス、プーマなどのスポーツブランド、あるいはパタゴニア、ノースフェイスなどのアウトアランドは人気ですが、いわゆるカジュアルウエアではブランド刺繍は流行らないようです。 もちろん今でも新宿の伊勢丹に行きますと、小さなキツネのマークの「KITSUNE」というブランドがあるのですが、これは高額なものでして、かつてのラルフローレンほど誰もが着るがる服だとは思えません。

 人気ブランドというのは、最初は人と違いたいという差別化欲求から人気が出始めますが、しだいに多くの人たちがそれを着るようになると、みんなが着ているから安心という同調欲求を満たすものに変わります。

 そういう同調ブランド服に対して、この20年ほどの間に広がったのが古着です。そのころ、今の若者は古着が好きだよと私が言っても、大手企業の人たちは信じてくれませんでした。それはごく一部の若者だろうとか、古着人気なんて一過性のものだろうとタカをくくっていたのです。

 大手企業の人たちはだいたい同調性志向が強く、有名ラン好きです。大手企業自体が有名ブランドなのだから当然です。だから世の中の人は皆ずっと有名ブランドが好きだと思い込みます。そして今でも、ラルフローレンの、あのばかでかい馬のマークを刺繍したポロシャツを買うのです。私にはあの感性はとても信じられませんね。あんな大きなマークを付けて歩くほどそのブランが好きなら、いっそのこと顔に馬の刺青でも入れたらどうかと思うくらいです。

 しかしこの20年、ファッションに関心のある人ほど古着志向でした。一見ボロい古着のほうがオリジナリティがあり、一点物であるという意味で差別化欲求を満たしたのです。ポロよリボロなのです
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「あんな大きなマークを付けて歩くほどそのブランが好きなら、いっそのこと顔に馬の刺青でも入れたらどうかと思うくらいです。」って、すごい罵倒ぶりでしょう。

ぼくはそこまでは思いませんが、遭遇したら、一瞬、目が釘付けになって、そしてあわてて目をそらせてしまいます。