「いかに崩すか難関大学への数学」の序が熱く語る

3ヶ月ほど前に、東大に合格するには数学の問題を3000題くらい暗記したらいい、という塾のことを書きました。

 eisuukinoshita.hatenablog.com

 

先日、『いかに崩すか難関大学への数学―理系版』(中村 英樹)を読んでいたら「序」にこんなことが書いてありました。

 

 

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 初めに断っておかねばならないが、本書は初歩・基本からの数学を指導する参考書ではない。これまで、一所懸命、数学を学習してきて、機械的計算問題や型にはまった標準的入試問題までは何とか解けるのだが、新作問題、難問やちょっとひねられた問題ではいつも“give up"という、力の伸び悩んでいる東大、京大、東工大などの難関大学 (理系)志願の受験生や高校生のための指導書である。

 概して受験生は,数学というものが暗記量や理解度を試すこと以上に、はるかに思考力を試すものだということを分かっていない。それ故、多くの問題の解法を理解・暗記して、上述のような問題に対して、解法を外枠のように、力づくで当てはめようと躍起になっている。初学者の段階ではこのような学習は仕方がないが、ある程度の段階に達して、いつまでもこの状態では数学の実力は向上するものではない。

“算法・解法の慣れとその暗記"ということは “機械的に解こう"という姿勢である。それが、ひいては “頭を堅くして解く"という結末になることに気付かない。それでは、コンピューター型算法に強くなるだけで、数学的思考力は強くはならないだろう。

そもそも出題者側はそれなりに頭を使って問題を作成し、何が出題されるか予想だにつかないのだから、受験生も頭を、相当、使って対応せねばならない。そうしないと、諸君が仮に入試数学の千、二千の間題と解法を理解・暗記しても、その間をくぐって難関大学が、無尽蔵に、新作問題や難問を出題してくるのに対処できまい。 (この意味において、数学は問題のバラエティーに富むこと他の教科の比ではない。)

“新作問題や難問は、出題されても,点差がつかないから捨ててもよい"という妙な開き直りは,難関大志願者には禁物である。これらこそ決定的点差がつくからである。しかも理系入試数学の配点は極めて高く、大間一題につき40~60点 (東工大では70点以上)が相場である。従って、仮に、大間一題でも全然解けなかったとすると、他の教科では補いきれるものではない。

それ故、日頃の学習において少しぐらい骨のある問題を忌避してはならない。また、それらが来年度入試で出題されるか否かは、数学の学習では、余り気にするものではない。要は思考力を磨けばよいのである。さもないと、脅えながら入試数学にぶつからねばなるまい。

 さて、本書の目的は、諸君に問題とその解法を理解・暗記させるということではなく、新作問題・難問を何とか崩していくべき思考力をじっくり磨き上げて頂くことにある。昨今の難関大入試数学において要求される思考力とは、
(一)問題文意と数式の読解・分析力
(二)的確な直観力
(三) 緻密な論理と表現力、
以上を統合したものである。

本書では、以上の諸点にかんがみて、重厚な問題、数学的センスや着想を要する問題など、バラエティーに富ませ、算法型や暗記型の学習ではたちうちできないような、しかも内容含蓄の多い問題を扱う。しかし、本書は、いわゆる、難問集ではない。難問はあるが、それらは苦しめる為の難問ではなく、出題した数学者の自然なセンスが生かされた問題である。ただ、出題者と受験生の“自然さ"のとらえ方に隔たり、否、ほぼ逆転があり、それ故に、自然な問題でも難しいと思われるのである。本書はその概念的差異を少しでもなくすることをも目的としている。

その為に,諸君は自ら、充分、考え抜いて、試行錯誤を繰り返し、そして自然な着想、時には驚くべき着想をして自己の能力を鍛えねばならない。そして諸君が、「これが数学というものだったのか。」、「 “数学=機械的計算"ではなかったのだ。」 ……と少しでも分かって頂けたなら、著者にとって本懐これに勝るものはない。本書で学ぶ高校生や受験生は、既成の堅苦しい解法などの先入観に東縛されずに、のびのびと考えて頂きたい。本書を単なる参考書・問題集に帰さないことを願ってやまない。

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なんだか著者の熱気が伝わってきますね。