「テレ東のつくり方」

好きなテレビ番組はいろいろありますが、お気に入りの放送局は「テレビ東京」です。大手テレビ各局が、なんとなく横並びのような番組をしている中、テレ東は独自路線です。人も予算も弱小ながら知恵と工夫でおもしろい番組を編み出しています。それに、お気に入りの大江麻理子さんが所属しているところでもあります。

また、選挙番組では、池上彰さんを起用して他局とは一線を画した報道をし、他局からも真似をされるようにまでなりました。

そのあたりの舞台裏を「テレ東のつくり方」が語っています。

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緊張の視聴率結果は・・・・・・  残念、20%。惨敗でした。私を補佐してくれた中川Dとともに打ちひしがれました。

振り返ってみると、「2つの無謀」があったように思います。まず1つは、悔しいですが、他局とほぼ同じタイムテーブルで真っ向勝負をしたこと。もう1つが、「演歌の花道」風が、実はそこまで独自路線ではなかったということです。

小選挙区の対決」がテーマだったこの選挙では、当然、他局もそこで勝負していました。私たちが力を注いだ演歌路線はしょせん「見え方、見せ方」の工夫でしかありませんでした。

しかも、小選挙区対決ということで、より当落の速報が注目されました。しかし、テレ東はヒトもカネも足りないので開票情報がどうしても遅くなってしまいます。他局と”同じ土俵”で戦っては勝ち目がない、その轍を踏んでしまっていた、悔しいですが、今から思うとそんなチャレンジだったのかもしれません。

 

”池上無双”を生んだ3つの勝因
     

では どうすればいいのか―。他局との真っ向勝負を避けて、湾岸戦争のときのように横並びの放送を回避して、細々とやればいいのか。それから10年間、この逆境に立ち向かうべく頭をひねり続けていた人間がいました。

「ザ・対決」の惨敗から14年後、池上彰さんがメインキャスターになって、テレビ東京の選挙特番は大躍進しました。”下克上”を起こしたと言われました。

この勝因は何だたのでしょうか? ここには3つのポイントがあります。

まずは、「己を知る」です。池上彰さんと福田裕昭Pは、「速報力では負けている」という自己分析から入ったそうです。そして池上さんから「家族みんなで楽しめる選挙特番をやりましょうよ」という問いかけがあり、「今までにない選挙特番作り」が始まったのだそうです。

次に「素朴な疑問」でした。「政治家とはいったい何者なのだろう?」という素朴な疑問から生まれたのが、「当確者プロフィール情報」でした。『池上無双』(福田裕昭+テレビ東京選挙特番チーム、角川新書)という本に、2014年総選挙のプロフイール傑作選が載っているのでいくつかご紹介しましょう。

麻生太郎、洗礼名フランシスコ」「前原誠司 今年、中学生と野球で対決 先発で回6失点降板」「平将明ガンダムに精通 ”平将門”は無効票です」
スタッフ独自の情報収集力と、「いじり力」を発揮した、まさにオリジナル企画といったところでしょうか。

そして3つ目の勝因が、「視聴者目線」です。
「相手が権力者だろうと、誰であろうと、『視聴者目線』で聞 べきことを聞くという姿勢で 池上彰さんはインタビューに臨みます。この取材スタイルがいつしか 『池上無双』と呼ばれ」(前掲『池上無双』より)。

池上さんは、安倍晋三総理にも本音を聞き出そうと、こちらがハラハラするほどの鋭い質問を投げかけます。

さらに池上さんは常々、「政治記者が聞かないことを聞く」と言っていて、タブー視されているところに切り込んでいきます。公明党山口那津男代表には、創価学会池田大作名誉会長と公明党とのつながりを聞き出しました。

  (中略)

各社の追随を余儀なくされていたテレ東が、追われる立場にまでなりました。もはや永田町で「12チャンネルさん」などと呼ぶ人もいないかもしれません。ヒトとカネが足りない、他局より劣っている、でもアイデアがあれば、逆境を跳ね返すことができる!
まさに「テレ東式」のサクセスストーリーがここにありました
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テレ東さん、これからもおもしろい番組を期待しています。