水島醉「進学塾不要論」(ディスカバー携帯)

最近担当している生徒さん全員が、私立高校私立中学に在籍です。公立学校の生徒さんは一人もいません。

たいていの場合、うまく校風に合って楽しく充実した学校生活を過ごしていますが、なかには成績不振でお困りの生徒さんもいらっしゃいます。

キノシタも、お教えしていて苦労するタイプにときどき出会います。なんだかよく分からないのに答えを出す方法だけを覚える学習法に固執したり、まったく学習意欲を失ってしまっているケースです。今までを振り返ってみると、意外と多いのです。

いったい、どうしてそのようなことが起こるのか? その共通の現象を考える参考になったのが、水島醉「進学塾不要論」(ディスカバー携帯)でした。


進学塾不要論 (ディスカヴァー携書)

進学塾不要論 (ディスカヴァー携書)


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■ 高い発達段階に至っていない子どもに中学受験をさせることの危険
進学塾に通った子どもの多くは、Cさんのように本来なら伸びるべき時期に伸びなくなってしまうような状態になっています。

 中学受験そのものはけっして悪いことではありませんが、受験勉強をした結果、学力に悪い影響が出るのなら、やっぱり受験などしないほうがよかったということになります。人によって発達の速さは異なります。速いのがよいわけでも遅いのがよいわけでもありません。それは子どもの個性であって、優劣ではありません。発達の速いことは、中学受験に向いている一つの要素ではあります。発達の遅い子どもはどちらかといえば中学受験には向いていませんが、高校受験や大学受験のときに、ぐっと伸る可能性を秘めています。

 高い発達段階に至っていない子どもに中学受験をさせるのは、子どもを潰す大きな原因の一つです。まだ理解する段階に至っていない子に無理に教えると、その子は本質とは違う方法で解こうとし、誤った理解に達する、つまり悪い学習スタイルが身につてしまます。これは直すのがたいへん困難です。場合によっては完全に直ることがない場合もあります。誤った理解をさせる(悪い学習スタイルを身に付ける)ぐらいなら何も勉強しないほうがすっとましなのです。

 ですから、その子のもっとも伸びる時に、もっとも適当な負荷を与えるのが、一番効率のよい学習です。しかし進学塾に入れると、一律に受験を勧められます。中学受験に向いている子にも向いていない子にもです。これがほとんどの大手の進学塾に共通する一番の問題点です。

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 私学中学受験に向いている小学生は、それほど多くないということでしょうか? 阪神間で中学受験を専門にしている塾の多さを思うと、受験に適していない子どもたちもその渦の中に巻き込まれ、本来伸びるはずの能力の芽をもぎ取られてしまっていることもあり得ます。ちょっと怖いですね。

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■低学年からの塾通いはけっしてさせてはならない
(略)
 それらの問い合わせに対して私は一貫してこう答え続けています。
「子どもさんが低学年の今から進学塾に入れて難問を解かせるような勉強をさせる必要はありません。いえ進学塾に入れないほうがおそらく子どもさんはよく伸びると思います。現在必要なことは、他にたくさんあります。

 勉強で言うならば、算数は基礎的な計算を速く正確にできるように訓練することです。高学年では割合の概念をしかり身に付けることが必要になりますから、分数の計算、比の計算までをしっかりと練習なさることが大切です。
 国語は読書です本が本当に好きで三度の食事より本が好きな子どもさんであれば、ほとんど国語の勉強はいりません。まずたくさんの本を読んでください。

 また、勉強というものは人間の能力の中のほんの一部、狭い限られた能力にすぎません。小学生、特に低学年ほど机の前に座ってする勉強より、野山で遊ぶスポーツをする、旅行に出かけるなど、実地での経験を積ませるほうが、ずっと頭がよくなります。机の前での勉強など、計り知れない可能性を秘めた子どもの能力からすると、ほんの小さなものなのです」
 
■95%の子どもが解けない問題を無理矢理詰め込まれることになる
 進学塾ではその性質上難問を解く力をつけさせなければなりません。しかし、現実は難問を解く力がない子どもに、難問を解く力をつける方法というのはありません。思考力は、訓練や強制だけで身につけられるものではないからです。

 だから進学塾では難問を解く力をすでに持ている子どもを探し、その子どもに難問を解く方法を教えるという指導をしつづけているのです。(この方法は特定の大手進学塾でなけれできないという特殊な方法ではありません。難問を解く方法を教えるという指導は、どの進学塾にでもできることですし、家庭教師、通信教育、またお母さんにもできます)。
 したがって難問を解くだけの基礎学力があり、それだけの発達段階に達している子どもであれば、進学塾の指導も悪くはありません。もちろん解き方を教えてもらただけですからその子の能力が上がったのではありませんが。
 危険なのは難問を解くだけの基礎学力がない子ども、あるいはそれだけの問題を解ける発達段階に達していない子どもにも一律に難問を解かせるという作業をしてしまうことです。
 偏差値70というと、およそ全体の2%。受験生の数でいうと50人に1人の割合です。入試問題は当然100点が取れないように作成されていますから、偏差値70の学校の入試問題を解ける子どもの割合は、おそらく70〜80人に1人ということになります。つまり進学塾では70〜80人に1人しか解けないような問題を解かせているのです。実際には進学塾に入るためにはまず入塾の時点で「ふるい」にかけられ、またクラス分けという「ふるい」にもかけられますから、すべてのクラスの子どもが偏差値70の学校の問題を解かされるとは限りませんが いずれにしろ多くの子どもが解けないような問題を無理に解かせているというのが 一般的な進学塾の実態です。

したがって、多くの子どもはわかってもいないのに無理矢理問題を解く、適当に公式に当てめて解く、親に教えてもらって書く、解答を写すなど、かえって頭が悪くなるようなことをさせられているのです。

こうして、その多くが勉強嫌いになり、勉強ができなくなり心理的にも社会的にもさまざまな問題を抱えるようになっていたのです。

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思い当たることが、多く書かれています。

 公立学校がいいのか私立がいいのか、お子さんのことを十分に考えて判断したいです。なかなか難しいですね。