分数タイプの不定形の極限値を求めるのに、約分・括りだし・有理化などの方法を用います。でも、有限確定値になるまで分母と分子を別々に微分すればいいだけの「ロピタルの定理」を使えばずいぶんラクチンに極限値が求まります。
ところが、この便利なロピタルの定理は禁じ手なんですね。
たとえば「赤チャート数学3」(数研出版)ではロピタルの定理を解説し、その証明(完全なものではありませんが)も記しています。そして【注意】として「ロピタルの定理は利用価値が高いが、高校の学習の範囲外の内容である。試験の答案には使わないで、検算の手段として使う方がよいだろう。」(p211)と断っています。
予備校講師の安田亨さんも月刊「大学への数学」(東京出版)で「入試で使っていい?と話題になる定番だ。大学によって対応が違う。使わないほうが式変形の筋力増強になるからそれを薦めたい」(2015年6月号)と使用に否定的です。
しかし、大学受験生は高校生だけ?そんなことはありませんね。いったん大学で学んでからまた大学を受験することだって珍しくありません。(友人久N君は阪大数学科を卒業すると同時に神大医学部を受験し現役合格しました) あるいは、自分でどんどん数学の勉強を進めている高校生だっているはずです。
中高一貫校で教科書として(厳密には検定教科書ではない)よく使われている「体系数学」(数研出版)でも、この定理は取り上げられています。また、東京書籍の教科書(検定済み)には「発展」扱いですが、ロピタルの定理と簡単な証明が書かれています。(p195)
高校の学習の範囲外だから入試で使ってはダメ、というのは難しい状況ではないでしょうか。