著者は、フランス国立人口学研究所 フランスの歴史人口学者・家族人類学者。(←どんな学問なのかまったく見当がつきません(^^;)
研究のなかで、ソ連崩壊やアメリカでのトランプ政権誕生、イギリスのEU離脱を予言したと言われています。なんだかすごそうな人ですね。
さて、全体で8章からなるこの本は、2014年に行われたインタビューでのやりとりの翻訳です。インタビュー形式ですから読みやすいです。
目次は次のようになっています。これだけ見ても、おおよその内容は分かりますね。
.......................引用...............................
1.ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
・自ら進んでドイツに隷属するようになったフランス リ
スノーデンを保護して西洋における市民の自由を守ったロシア
ロシア脅威論は西洋が病んでいる証
「新冷戦」ではない
アメリカと衝突しはじめたドイツ
ヨーロッパの支配権を手にしたドイツ
オランドは「ドイツ副首相」
・ウクライナ問題の原因はロシアではなくドイツ
ドイツの強さの源泉
アメリカによるヨーロッパ制御の鍵はドイツ
ドイツ外交は不安定-歴史の教訓
アメリカ帝国の凋落
アメリカvs「ドイツ帝国」
ロシア崩壊こそアメリカにとっての脅威
愚かなプレジンスキー-ロシア嫌いでドイツの脅威を見誤る
東欧支配で衰退したソ連、復活したイツ
・ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
地図が示す「ドイツ圏」という領域
フランスの協力によって完成した「ドイツ圏」
「被支配地域」- 南欧
「ロシア嫌いの衛星国」-ポーランド、スウェデン、バルト三国
イギリスに近いデンマーク、ロシアに近いフィンランド
「離脱途上」-イギリス
ドイツ覇権よリアメリカ覇権の方がマシ
「離脱途上」- ハンガリー
「併合途上」-ウクライナ
ガスパイプライン問題-争点は「ロシアvsウクライナ」でなく「ドイツvs南欧」
ヨーロッパという階層システム
・アメリカとEUの産業上の不均衡
不均衡はドイツ支配にプラスに作用
ドイツ一人勝ちのシステム
・アメリカと「ドイツ帝国」の衝突
ウクライナは国家として存在していない
ウクライナ問題の行方
アメリカによるユーラシア大陸コントロールの鍵-ドイツと日本
今後二〇年に衝突の危機
アメリカの自人デモクラシー
ドイツ専用のデモクラシー
カをもつと非合理的に行動するドイツ
平等と自由をめぐるドイツ・フランス・アメリカ
価値観のちがいが対立を招く
ドイツのせいでロシア接近を阻まれた日本
政治指導者にサイエンス・フィクションを勧めたい
2.ロシアを見くびってはいけないヽ』
乳児死亡率の上昇から予見できたソ連崩壊
乳児死亡率が低下し出生率が上昇しているプーチンのロシア
経済指標は捏造できるが、人口学的指標は捏造できない
ロシアの安定化を見誤った西側メディア
「プーチン嫌い」が真実を見えなくさせている
国内で支持される権威主義的デモクラシー
KGBはロシアのエリート養成機関
ロシア経済の二つの切り札
人口学的指標が示すロシアの健全さ
3.ウクライナと戦争の誘惑
家族構造からみたロシアとウクライナ
国家が機能してこなかった「中間ヨーロッパ」
人口学で確認できるウクライナの解体
「親EU派」と称される極右勢力
「テロリストvsファシスト」の戦争に対して冷静なプーチン
ウクライナの暴走とヨーロッパの破産を止められるのは誰か?
4.ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
イラク戦争時のロシアとョーロッパの接近
オバマ大統領による路線転換
極端に振れるドイツの対露外交
ウクライナ問題をめぐるドイツの強硬姿勢
ロシア嫌いの『ル・モンド』紙
西側メディアの非合理的な報道
ロシアの合理的な外交
アメリカは自分が何をしているかを理解していない
アメリカから自立したドイツ
米露の協調こそ世界安定の鍵
真のプレーヤーは米・露・独のみ
ロシアが好戦的になることはありえない
アメリカなしにヨーロッパは安定しない
ヨーロッパはすでに死んでいる
ユーロは機能していない
5.オランよ、さらば!-銀行に支配されるフランス国家
オランドの三つの失政
政府債務は民間金融機関の発明
率先して脱税する予算担当大臣
場当たり的な「資産公開」は反民主主義的行為-国家と銀行の力関係
社会党の「銀行寄り路線」
ネオリベラリズムの正体-銀行が国家をコントロールしている
政治家に「透明性」を求める銀行
オランド大統領は「マルク圏」の地方代表
真の権力中枢はメルケルでなくドイツ経済界
ヨーロッパとはドイツ覇権の下で定期的に自殺する大陸?
オランド大統領にした助言
6.ドイツとは何か?
「ドイツ嫌い」をめぐる論争
ドイツの特異性とは何か?
フランス人が発明し、ドイツ人が利用したユーロ
単独行動を始めたドイツ
ゲルマン人の家族構造とドイツ経済
ドイツと日本の類似性
ドイツとフランスのちがい
ドイツと日本のちがい
ドイツ文化の二つの危険性
「財政規律の重視」はドイツの病理
フランスがドイツに隷属する背景独自通貨をもたない国家の悲惨
ピケティの分析が示唆するもの
7.富裕層に仕える国家
「市場」とは「最富裕層」のこと
「一%対九九%」の格差に奉仕する国家
格差拡大は倫理ではなく経済の問題-ピケティ学派の功績
国ごとに異なる形での寡頭支配-左翼が見落としているもの
政府債務は富裕層の集金マシーン
寡頭制(富裕層)は貴族制とは異なる
需要不足を補って破綻したサブプライム・ローン
金持ちたちのケインズ主義
緊縮財政は「間抜け者の保護主義」
ドイツにストップをかけるのがフランスの使命
一九三〇年代の対立が再来!?
政府債務は返済されない-幣を増刷するか、デフォルトを宣言するか
政府債務のデフォルトを宣言したらどうなるか?
8.ユーロが陥落する日
左翼こそ保護主義を主張せよ
サルコジ的ポピュリズムはもはや支持されない
二つの領域の交差点としてのフランス
社会を崩壊に導くエリートたち
強大で不安定なドイツ
ドイツ経済がヨーロッパの民主主義を破壊する
ユーロ全体主義
戦争なき独裁
もし私がフランス大統領だったら……
許せないのはエリートの責任放棄
編集後記
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ヨーロッパで大きな存在であるドイツの現状を知ろうと読んでみました。ヨーロッパの帝国となるドイツと東アジアでの帝国を目指す中国とが、接近していることを初めて知りました。ドイツのメルケル首相は、ほとんど毎年訪中しているのに、日本には2015年に7年ぶりに訪れたのでした。
著者の「日本は核武装すべき」との主張には素直にうなずけませんが、ドイツのことだけでなく国際情勢を考える上でちょっと刺激的な本でした。