本明寛「なぜ電車の席は両端が人気なのか」(ふたばらいふ新書)

書名「なぜ電車の席は両端が人気なのか」は、単なる“つかみ”で、そのことについてだけを解説した本ではありません。ひとの振る舞いや行動パターンを通して、その人の心理的傾向を探っていく内容です。

 今までは否定的に考えられていた心理的特性の人にも、肯定的なとらえ方もできるのではないか、と述べる著者の考えがいいですね。

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 この本は、こうした個人の心の傾向に重点をおいて、健康と幸福への手がかりを探ろうしとてまとめたものである。「汝自身を知れ」の意味するところは、人間の不精と億劫がる警告も含まれている。つまり「知っているけれどやらない」ということだ。これこそ、「汝自を知れ」の深い意味ではないだろうか。他人に「自分を見た点」を教えてもらうのではなく、「自分を自分で見て」改革と前進の根拠とすることである。

 ストレスの後の疾病を避けるなら、自分で自分に高い自己評価をする心構えが大切であろう。高い自己評価を持つことは、自分で自分に高い評価をすることであって、決して他人の高い評価を待つことではない。高い自己評価の根源は、自分のよい点、優れた面の発見とそれを伸ばす努力である。自分の視野を多角的、多面的に広げ、自分を見つめなおせば、自分にも必ず優れた点があるはずだ。自信を失った少年期の子どもが自信を取り戻すためには、このよい点、優れた面を発見し、それを明確に、力強く伝えることである。

 交流分析学者たちは「人は勝つために生まれた」(Bron to win)といっているが、これは「自らに勝つために」生まれたという意味である。どんな状況においても、必ず自己のよい点、優れた面を発見することを忘れてはならない。野口京子氏は、「自我態度スケール」において「合理性」の得点の高い人は、「現実をきちんと把握し行動手段を整えシャープで頼りになる」と評価しているが、「合理性」の得点の低い人にも「人に圧迫感を与えない。人間味あり温かそうである」と評価している。従来、合理性の低い人に対しては「人にだまされやすく感情に流される」と悪い評価をしたものだ。未来への期待も大切でないか「今こうであるが、やがてすばらしくなる」といた自己判断も大切な心構えである。

  自分をよく知り、他者の心を正しくとらえ、温かい心の交流のできる人間関係を形成するという心理学の原理が、今日の日本の世情では無視されているように思う。健康も幸福も、対人関係の温かさ、強さに依存するところが大きいことを忘れてはならない。
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 今担当している生徒さん達に対しても「今こうであるが、やがてすばらしくなる」という気持ちを持って、勉強を続けていきたいです。