家庭教師をしていると、良い先生と思われたい、という気持ちは常にどこかにあります。かゆいところに手が届く学習指導をすれば、生徒はラクチンですから評判は上がります。でも、そのことと、本当に学力を伸ばしてあげることとは、ちょっと違いがあります。
「教えすぎない」「ポイントとなるヒントを暗示して、あとは生徒自身の考えで解けるまでじっくり待つ」という方針で、キノシタながらくお仕事をしてきました。幸いなことに、保護者の皆さんもこのことを理解して下さっているのでしょうか、クレームを頂戴したことは一度もありません。有り難いことです。
- 作者: 阿部幸夫
- 出版社/メーカー: 幻冬舎ルネッサンス
- 発売日: 2009/08/30
- メディア: 新書
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.......................... p119より引用 ...............................
親切な先生が良い先生とは限らない
生徒に人気がある先生が学力をつけてくれるかというと、そうとは限りません。一見、ぶつきらぼうな先生が「考える力」をつけるテクニックを持つている場合が意外に多いのです。生徒に人気のある親切な先生は定期テストの前に教科書の解答を配ったり、問題集の解答集を持つて質問に行くと解答集に載っている答えをはじめからていねいに説明してくれたりします。ところが、一見、不親切のように見えますが、時間をかけて考えを引き出してくれる先生がいます。このような先生が、学力をつけてくれる先生なのです。
このような先生の場合、例えば、生徒が問題集と付録解答しか持たずに質問に行くと、「途中まで自分で解いてあるならノー卜を持っておいで」と生徒は追い返されます。ノートはその生徒が考えた道筋を把握するための大切な資料です。指導力のある先生は生徒のノートを見て適切な教え方を選ぶわけです。生徒の理解の仕方に合ゎせて、教える手段をいくつも持っているのです。
生徒がノートを持っていくと「最近、小さな文字が見にくくて。悪いけど、おまえ、間題を読んで、その状況を説明してくれるか?」と言ったりしますから、生徒からすれば「何とずぼらな教師」ということで、家に帰って「あの先生不親切や」と言いそうです。しかし、その先生は問題の設定状況を生徒に説明させることによって、生徒に問題を把握させようとしているのです。実際、この段階で何人かが、「あ、わかつた」と言つて帰っていくこともあります。そうなれば、生徒は自分でわかったと思い、満足そうな顔になります。そして「その問題に関しては、君は免許皆伝だからクラスのみんなに教えてあげてね」との指導が加わりますから、学習活動において、クラスのチームワークも考えてくれる先生ということになります。
ドーパミン回路を心得た先生とはこういう先生ですが、このように生徒の心理をつかむことができる先生は、最近ではあまり見かけなくなってしまいました。このような場合にモンスターペアレントが出てきて 「不親切じやないか」とやってしまうと、良い先生がいなくなってしまいます。「悪貨が良貨を駆逐くする」事態は避けなければなりません。消費者である私たちの目が先生を育てるうえでカギを握っているのです。
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